子供のために、何ができるのか

令和元年10月より、消費税率が引き上げられます。それに伴い、幼児教育の無償化が始まります。おおざっぱに言うと、満3歳以上の幼児の幼稚園や保育所の利用料が無償化されるわけで、我が家でも上の子の利用料が無償となります。国民の納めてくださった税金の恩恵を受けていることを思うと、感謝の念がわいてきます。
私は月刊誌『れいろう』の編集に携わっており、7月号の特集テーマは「子供が幸せになる育て方」でした。この時、松浦勝次郎先生(1939-2019。モラロジー研究所顧問)のインタビューをする機会をいただきました。先生からは「永続をめざす大事業――子育ての使命に熱意をもって」というタイトルで、なぜ子供を育てるのかという根源的なお話や子育ての覚悟、家庭内の方針を一貫させるという具体的な子育ての指針など、多岐にわたって伺いました(※『れいろう』7月号については、こちら をご覧ください)。
インタビューを終えて、お茶をいただきながら、先生と雑談をしているときに、ポロっとおっしゃったことがあります。それは、
「子供は国の宝ということで、今、日本政府がいろいろな子育て支援を行っています。多種多様なところにお金をかけて子育てをしている層をサポートしているけれども、そのような子育て支援というのは、本当の子育て支援なのでしょうか。
それらは子育て支援ではなく、親が子育てをしなくてもよい支援ではないでしょうか」
という言葉でした。
そう言われて、私はハッとしました。社会全体で子供を育てるという考え方は正しいと思います。いろいろな給付金や今回の幼児教育・幼児保育の無償化などもそうですが、日本においては子育てが金銭的な面で、とても楽になっています。ただ、精神面はどうでしょうか。親が子育てに心を傾けることの重要性は言うまでもないことです。金銭的支援によって子育てが楽になったことで、どれだけの親が子供のために時間を割いたり、手間をかけたりするようになるか。子供が本当に幸せになるのかというと、確かに疑問はたくさん残ると思っています。
松浦先生は、『れいろう』7月号の発行を待たずに亡くなりました。そうした経緯もあり、先生との雑談から最後に課題をいただいたように思います。しばらくは先生の言葉を思い出しながら、子供たちに接していくことになるのだろうなと感じています。
保育の無償化が始まり、自分自身が親として楽になったその分、子供のために何ができるのかと考えるも、なかなか答えは出そうにありません。私の両親や周囲の先輩方からヒントをいただきながら、考えていきたいと思っています。