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November 28, 2019

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無償の愛

April 10, 2019

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 今回は「無償の愛」について、いまだ忘れられずにいる話を紹介いたします。

 

 ベトナム戦争のとき、宣教師たちが運営する孤児院が、誤爆によって、宣教師と子供たちが死傷する被害を受けました。重傷の子供の中でも8歳の女の子は最も危険な状態でした。無線で助けを求めると、しばらくしてアメリカ軍の医師と看護婦が到着しました。

 

 少女は大量に出血しており、緊急輸血の必要がありましたが、輸血用の血液などありません。医師は、心配そうに集まっている周りの人たちに、血液を提供してほしいと、ジェスチャーを交えて必死に訴えました。

 

 沈黙の時間がしばらく続いた後、大人たちに混じって見ていた一人の少年が、恐る恐る手を挙げました。

 

 急いで血液を調べ、輸血の準備をし、苦しむ少女の隣に少年を寝かせて、輸血用の針を腕に刺しました。少年は黙ったままじっと天井を見つめています。

 

 しばらくすると、少年は眼に涙を浮かべ、そのうち、自由になっている手で顔を覆うと、しゃくりあげるように泣き出しました。注射針が痛いのかと思った看護師は、やさしく微笑みかけ、大粒の涙をこぼす少年に「どこか痛いの」と尋ねました。二度三度と尋ねても、痛くはないと言います。

 

 そこへ、別の村からベトナム人の看護師が到着しました。医師はその看護師に少年に何が起きているのかを尋ねるよう頼みました。現地の言葉で看護師がやさしく話しかけると、少年の悲しそうな表情はゆるみ、ようやく平静を取り戻しました。そして、少年は、こう答えたのでした。

 

「僕はまだ死にたくない!」「僕は血を抜かれて、まもなく死んでしまう……、でも僕は血だらけになったこの女の子を僕の血で助けるんだ……」と。

 

 それを聞いた看護師や周囲の大人たちは皆愕然としました。

 

 針の痛さのせいではなく、まもなく死ななければならない悲しさと、自分が少女を助けるのだという使命感との葛藤の中で、少年は涙を流していたのでした。

 

 輸血に対する知識が全くない少年が、自らの命と引き換えに、少女を助けようとした行為、30年以上前にキリスト教の牧師が早朝のラジオで話していたこの話を、私は今でも思い返しては自分の心に問いかけています。

 

 寄付やボランティアといった慈善行為は、お金や時間に余裕のある人がするものだという思いが、私も心のどこかにあります。しかし、この少年には、財産や時間的余裕、ましてや特別な才能があったわけではありません。純真な心をもって、自分の一番大切なものを人に与えたのです。対価を求めず私財を提供する、あるいは無償で労力を提供することは、口で言うほど簡単にできることではありません。ましてや、「無償の愛」の境地にまで達することは非常に難しいことです。

 

 

 周囲の大人たちがなしえなかった、少年が私に教えてくれた「無償の愛」の精神を、いつも心の底に持ち続け、日常を過ごしていきたいと思っています。

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