「つながり」の中で生きている

「袖振り合うも他生の縁」というコトワザがあります。「道で袖と袖とが触れ合うような小さな出会いであっても、すべて前世からの縁によるものだから、大切にしなければならない」という意味です。日本人は古来、人と人との「つながり」を大切なものと考えてきました。
現代はたいへん便利で効率のよい世の中です。私たちの暮らしに必要な食品や日用品、衣料品などは、人と深く関わらなくても、コンビニやスーパーなどで簡単に手に入れることができます。さらに言えば、スマホやスマートスピーカー(AIスピーカー)からネットにアクセスし欲しいものを購入するだけで、生鮮食品から大型の家具まで、ありとあらゆるものが家に届きます。このように便利な生活に慣れてくると、他人と関わらなくても自分一人で生きていけるように思えるかもしれません。
しかし、私たちの社会生活が滞ることなく順調に動いているのは、それぞれの持ち場で働く多くの人たちの力があるからです。コンビニに並ぶ商品も、どこかの誰かが作ったものをどこかの誰かがそこに運んできたものです。社会とは、構成する人々の努力や支え合いによって成り立っているものなのです。つまり、自覚しているかどうかにかかわらず、私たちは実に多くの人々との「つながり」に支えられて、日々の生活を送っているのです。
こうした人と人との「つながり」は、いわば「横のつながり」です。そして私たちを支える「つながり」は、これだけではありません。
例えば、道路・鉄道・上下水道・送電網・港湾・ダム・通信施設などの産業の基盤となる施設、警察・消防・学校・病院・公園・福祉施設などの生活の基盤となる施設も、元をたどれば、先人たちが長い年月をかけて整備してきたものです。現代の暮らしに不可欠なインフラは、一朝一夕にできたものではありません。
現代の日本は、多くの先人たちによる努力の積み重ねによって、非常に恵まれた生活を送ることができる環境にあります。その快適な暮らしの背後にある先人の苦労や志に思いを馳せたいものです。
毎日の生活を送る中、心のつまずきがあっても、あちこちに散らばっている小さな「つながり」を見つけて、そこに感謝を感じることができると、少しだけ気持ちが楽になることでしょう。