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心の受信力・発信力

October 31, 2018

 

 東京大学名誉教授の月尾嘉男さんは、北アフリカの砂漠地帯で遊牧生活を送る先住民族の人々を訪ねたときの体験を、次のように紹介しています。

 訪問先は、アトラス山脈の南側の斜面に当たる土地。山脈を横断する道路の途中で車を降りてから、灌木がまばらに生えているだけの標高2600メートルほどの砂漠を徒歩で1時間半も進んでいくと、ようやく遠くの窪地に建てられたテントが見えてくるという、孤立した地域です。

 

 このテントで暮らす3世代7人の家族は、月尾さんたちを迎えると、まずお茶をふるまってくれたといいます。来客をお茶でもてなすのは日本と同じですが、ここでの真水がどれほど貴重なものであるのかを、後日、水汲みに同行した月尾さんはあらためて実感することになります。それは断崖絶壁の細道を歩いて約5時間もかけて往復し、運んできたものだったのです。

 

 滞在中にはヤギ1頭を解体して、近隣の人々も招き、盛大な宴会を開いてくれました。その宴会の最中、砂漠に向かって大声で何かを怒鳴り始めた人々。それは、はるか彼方に米粒ほどの人影を認めて「宴会のごちそうがあるから、立ち寄って食べていくように」と呼びかけていたのでした。相手は砂漠の移動中にたまたま通りがかっただけの人ですから、もちろん知人というわけではありません。

 

 彼らはなぜ、見ず知らずの人のためにこれほどまでに尽くすのか。月尾さんがその親切の理由を尋ねると、こんな答えが返ってきたといいます。

「すべては“神から与えられたもの”だから、誰にも平等に分配するのが当然なのだ」と――。(参照=月尾嘉男著『幸福実感社会への転進』モラロジー研究所刊)

 私たちは、この話から何を学ぶことができるでしょうか。

 

「与えられたもの」に対して不足を思わず、自然の恵みに心から感謝すること。そうしたものを独り占めせずに、他の人々と分かち合うこと。見返りは求めず、他のために尽くすこと……。そんな一人ひとりの「心のあり方」が、彼らの心豊かな暮らしの秘訣であるとしたら、物質的に豊かになった現代の日本でも、心がけ一つでこれを実践できるということではないでしょうか。

 

 科学技術が進歩して、どれほど便利な世の中になったとしても、人は一人きりで生きていくことはできません。まず大切なことは、そうした「つながりの中で生きる自分」や「多くの人たちの力で支えられている自分」を自覚することです。そのとき、私たちは自分自身の日常に隠れている数々の「ありがたいこと」に気づいて、感謝の心がわき起こるのではないでしょうか。それとともに、「自分も他の人々の力になれるように」という積極的な気持ちを育んでいきたいものです。

 

 物事を感謝の気持ちで受けとめる「心の受信力」と、他の人々への具体的な思いやりの行為につながる「心の発信力」――私たち一人ひとりがこうした「心の感度」を高めていくことは、心豊かな社会を築く原動力になります。また、そうした社会の中でこそ、自分自身の安心な暮らしが保証され、「喜びの多い人生」が実現するのではないでしょうか。

 

平成30年11月号
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