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道徳ってなんだろう

August 1, 2019

 

 総合人間学モラロジーの創建者・廣池千九郎(法学博士、1866~1938)は、大正から昭和の初めにかけて「道徳の科学的な研究」に取り組みました。その廣池に、次のようなエピソードがあります。

 

 昭和4(1929)年3月、廣池が2人の随行者を連れて講演先へ向かう道中の出来事です。乗っていた汽車が途中の駅で止まったかと思うと、その先でトンネルが崩落したとの知らせが入り、下車を促されました。復旧を待っていたのでは、講演先との約束の時間に間に合いません。一行は駅前でタクシーを頼み、3人を乗せて目的地まで20円で行ってもらうことになりました。

 

 荷物を積み込み、出発しようとしたとき、2人の人物がやってきました。1人は「重要な仕事があって先を急いでいる」という、会社員風の男性。もう1人は「どうしてもすぐ家に帰らなければならない」という女学生です。駅前のタクシーは出払っていて、廣池たちが乗ろうとしている1台を残すのみでした。気の毒に思った随行者は、親切心から「どうぞ、どうぞ」と同乗を勧めました。

 

 ところが、その人たちが車に乗り込もうとした瞬間、廣池が口を開きました。


「私たちは目的地まで、3人で20円という契約をしたのです。あなた方2人が加われば、その分ガソリンが余計にいるでしょうし、タイヤも傷むでしょう。それでは運転手さんが気の毒だから、私たちもあなた方も全員、1人5円ずつ出すことにしませんか」

 

 つまり、5人で合わせて25円を支払うことにすれば、運転手は当初の契約より5円収入が増えるというわけです。

 

 実は、そこには「同乗を頼んできた人たちだって、多少なりとも自分のお金を出したほうが気兼ねなく乗っていけるだろう」という配慮もありました。廣池たちの一行も、同乗者が増えることで少々窮屈な思いはするでしょうが、3人で15円ということなら、当初の予定より5円安く済むのです。種明かしが済むと、廣池はこう言いました。

 

「これで三方、どちらもよいことになるでしょう」

 自分が親切心を発揮することで、相手が助かる。それは「道徳的な行為」といえるでしょう。しかし、その行為の影響を受ける「自分と相手以外の第三者」の存在を、ともすると見落としてしまっていることはないでしょうか。

 

 ここでいう「第三者」とは、エピソード中のタクシーの運転手のように、顔の見える相手ばかりとは限りません。広くとらえるなら、それは私たちが生きる社会全体ともいうことができます。

 

 私たちは、この広い世界にたった1人で生きているのではありません。まずは日常、何かをしようとするときには、ひと呼吸置いて「自分の行為の影響を受ける人」の存在に思いを馳せてみたいものです。こうして、一人ひとりが「自分よし・相手よし・第三者よし」の「三方よし」を心がけ、みずからが発信源となってより多くの人たちへと思いやりの心を広げていったとき、きっと「誰にとっても安心・円満な社会」が実現するのではないでしょうか。

 

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