心地よさと安心感

私が小学2、3年のころ、父の友人である中年の男性がときどき家にやって来ました。オジさんは、私を見ると大きな声で「おお、おお、坊、元気だったか」と言いながら、うれしそうな笑顔を見せてくれました。大きな体と髭づらで、一見怖そうでしたが、「おお、おお、坊」と呼ばれると、私はウキウキとうれしい気持ちになったものでした。
日ごろは人見知りする私も、そのオジさんに限っては、そばに寄り、家族と話をしている横に座っていたり、時には膝に座らせてもらったことを覚えています。オジさんのそばにいるとき、心地よさや安心感のようなものを感じていたのだと思います。どうしてそう感じていたのか考えてみると、私がオジさんに「適切に」接してもらっていたことによるのではないか、という気がします。
「適切に」ということをあえて説明すれば、私という存在を子供扱いせず、小さいながらも一人の人間として認め、かつ私のあるがままの姿を喜んでくれていたこと、また、例えば「好きな勉強は何?」というような質問をして無理に子供とコミュニケーションを取ろうとするワザとらしさがなかったこと、やたらに誉めたり、ご機嫌をとったりする構いすぎや過干渉がない自然な態度だったこと、そして、おそらく決定的だと思うのは、いつも機嫌のよい快活な笑顔を見せてくれていたことだと思います。
現在、少子化傾向の中、親は、子供に目が届きすぎていろいろと心配し、親の不安から子供に「ああしろ、こうしろ」と構いすぎる傾向が強くなってきたように感じています。それが、子供を見守るというよりは、過干渉になって現れているのではないでしょうか。それはたぶん子供にとってはうっとおしいこと、ゆったりとした気分にさせてくれないことなのです。
気持ちのよい親子関係をつくるにはどうすればよいか、子供の心地よさ、安心感の視点から家庭のあり方を考え直してみるのもよいと思います。