人を育てる心

相手のためを思ってかけた言葉。ところが、その思いが相手にうまく伝わらなかったのか、反発を受けてしまった――そんな経験はないでしょうか。
特に「助言」は難しいものです。誰しも自分のしたことを否定されたり、行動を制限されたりするのは、決して気持ちのよいことではありません。自分が逆の立場に立ったときのことを考えると、「~しなさい」「~してはいけない」という強制や禁止を受けて、やる気を削がれた覚えがある方も多いでしょう。
間違いのない正論であっても、それを押し付ければ角が立ちます。すると、相手は「その主張の正しさ」を頭で理解したとしても、心から納得して受け入れることは難しくなります。助言の裏にある“相手によくなってもらいたい”という思いをよりよく生かすには、どうしたらよいのでしょうか。
“自分は正しいことを言っている”という思いは、相手の気持ちや周囲の状況を見えにくくします。親が子に、上司が部下に、先輩が後輩に接するときのように「相手を教え導く」という立場に立ったなら、ことさら冷静になり、相手に対する深い「思いやりの心」を実際の言動に表すように心がけたいものです。
勉強でも仕事でも“やらされている”“しなければならない”と思うと疲れます。しかし“よし、やってみよう”という気持ちになると、どうでしょう。大切なことは強制ではなく、相手の心に寄り添って「やる気」を引き出すようにはたらきかけることではないでしょうか。
相手の持ち味や豊かな可能性を認め、その成長と幸せを心から祈る――そうした心づかいに基づく助言は、相手の心に落ち、お互いの安心と喜びを生むことでしょう。
平成30年2月号