「働く喜び」を味わう

私たちは人生の中で、働くことに多くの時間を費やしています。だからこそ、この働くということを喜びととらえるか、それとも苦しみととらえるかによって、人生の味わいはまったく変わることでしょう。仕事をしていても充実感が味わえないとき、特に「自分の仕事が正当に評価されていない」と感じるときなどは、「働く喜び」とはどのようにして生まれるのかを、あらためて考えてみたいものです。
一般的に、仕事には次の三つの要素が不可欠であるといわれます。 ①自分の能力を発揮できる(自己の成長を実感できる) ②他人や社会の役に立つことができる(社会に貢献している) ③報酬を得ることができる(生活のための十分な収入がある)
これらの要素が重なり合ったとき、喜びが生まれます。そこでは物質的な満足だけでなく、「一生懸命仕事に取り組んだ達成感」などの精神的な満足も大きな部分を占めることは、多くの人が実感しているのではないでしょうか。職場とは、そこで働く人にとっての生活の基盤であり、生きがいを得る場でもあるのです。
また、仕事の目標に向かってひたむきに努力する中で、「自分の新しい可能性」を見いだすこともあるでしょう。そうして自己実現していくこともまた、仕事から得られる大きな喜びとなります。
もう一つ、忘れてはならないことがあります。私たちは意識しているか否かにかかわらず、日々、いろいろな人たちのお世話になっているものです。職場でも「一人前に仕事をしている」と言っても、上司や先輩からアドバイスをもらったり、同僚や後輩に助けられたり、取引先に教わったりすることもあるでしょう。
つまり、仕事とは一人の力だけでできるものではなく、多くの人たちの協力があってこそできるものなのです。さらには「取引先やお客様があっての仕事」ということもできます。
働くということは、「周囲の人々を喜ばせ、人々を支え、社会の役に立つこと」です。見方を変えれば、私たち自身は他の人々の働きによって支えられているのです。このように考えると、私たちは「働くことによって、互いに支え合っている」ともいえるでしょう。
そうした中での「働く喜び」――それは感謝の心があってこそ、味わうことができるものなのではないでしょうか。
平成29年11月号