共に生きる喜び

ボランティアに関心はあるものの、なかなか手が出ない――そんなふうに思っている人は、意外と多いようです。もちろん、そこには時間的な制約や経済的な理由もありますが、「活動への参加方法が分からない」「きっかけがない」「何をすればよいかが分からない」といった思いから、実践に踏み出すことができない場合もあるでしょう。
意欲があっても実践できない人の多くは、「ボランティア」ということを、つい大げさに考えてしまっているのかもしれません。しかしボランティアとは、何も特別なことではなく、ふだんの暮らしの中で当たり前に行われている「人と人との支え合い」にほかなりません。そう考えると、人それぞれに「他人や社会のためにできること」を見つけることができるのではないでしょうか。
私たちは社会の中で、大勢の人たちと支え合って生きています。それはお互いの違いを認め合い、理解し合うことから得られる「共に生きる喜び」を味わうことでもあるのでしょう。
ボランティアの場合も、単に「誰かに何かをしてあげること」というわけではありません。活動の中で関わった人たちから学ぶことがあったり、「自分自身もこうして支えられている」という点に気づいたり、自分の中に眠っていた能力や新たな可能性を見いだしたりと、最初の一歩を踏み出せば、自分自身も必ず得るものがあるでしょう。さらに、相手の喜びに触れる経験を通じて「自分も役に立つことができた」という実感が得られたなら、それは何よりの喜びとなるはずです。
どんな小さなことでもいいのです。みずからの可能性を信じ、「他人や社会の役に立つ」という気持ちを大切にして、まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。その一歩が、この社会と自分自身の人生を潤いのあるものにしていくのです。
平成29年10月号