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挨拶は魔法の呪文


 私が東京都内の独身者用マンションに一人暮らししていた時のことです。今どきのマンションらしく、エントランスはオートロックで綺麗な住まいでした。しかし、どこの部屋にも名前が書いていなくて、隣にはどんな人が住んでいるのか、全く分からない状態でした。

 ある時、私はマンションのエントランスの鍵を持たずにゴミだしに出てしまったのです。朝の9時頃、ほとんどの人は仕事に出かけた後です。マンションから締め出されてしまった私は、一瞬頭が真っ白になりました。そこでマンションのエントランスのロックを解除してもらおうと、一軒、一軒のチャイムを鳴らしました。しかし、思ったとおり、どこの部屋も留守でした。諦めかけたとき、一つの部屋から応答があり、お願いしてロックを解除してもらい、何とかマンションに戻れたのです。改めてコミュニティーの人間関係の大切さをしみじみ感じました。

 それ以来私は、廊下で、エレベーターで、人と出会った時は、必ず挨拶するように心がけました。そうするうちに段々挨拶を返してくれる人も増えて、何となくマンションの雰囲気が優しく感じられるようになってきました。それからも時々、他の部屋の人が鍵を忘れて締め出される事がありましが、私が部屋にいる時は、気持ちよく開けてあげるようになりました。

 挨拶には、かたくなりがちな人間関係の心の扉を押し開く不思議なパワーがあります。核家族化が進み、隣近所との付き合いがなくても生きてゆけるという意識が芽生え、むしろ付き合いは、煩わしいものという風潮も生まれてきました。そして次第に近所付き合いとともに、挨拶も忘れられる傾向が生じたのです。もう一度挨拶を取り戻し、お互いに助け合うコミュニティーづくりを考えなければならない時期に来ているのではないでしょうか。挨拶は魔法の呪文のようだとは思いませんか。

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